メタ栄養学が明かす答え ~本当に健康になる食はこれだ~
当協会では、「食と健康」の最重要の論文であるメタアナリシスをすべて集めて調べています。このような研究を「メタ栄養学」と呼びます。メタ栄養学により、「食と健康」について現時点でもっとも科学的な見解が得られます。
すべての論文(メタアナリシス)の結果を一つにまとめたのがメタ・チャートです。
マスの一つ一つが論文の結果です。 赤は「注意すべき食品」、青は「健康にいい食品」という結果を意味します。
まずはぜひメタ・チャートをじっくりとみてください。そこから浮かび上がってくるのは次の3点です。(リンク先では結果を詳しく紹介しています。)
・野菜は多くの疾患の予防に効果的
・肉、脂質、炭水化物は要注意
・食品からとる栄養は効果的だが、サプリは効果的とはいいがたい
これは、見ればみるほど、驚くべき事実です。
肉・野菜・油・炭水化物といえば、私たちの食事の大部分です。それらのうち健康によいといえるのは野菜であって、のこりの肉・油・炭水化物はどれも注意を要する食品だというわけです。そしてサプリでとる栄養には効果がないのに対して、食品からとる栄養は健康効果が大きいのです。この栄養を豊富に含んでいるのが野菜なのです。(野菜類の説明はこちら)
これはつまり、肉、油、炭水化物は食べる量を意識してひかえめにするのがよく、野菜をどんどん食べるほどよいということです。そして野菜不足はサプリで補うことができません。
このように、メタ栄養学によってわかる「健康的な食事」とは、野菜や果物をたっぷりとり、肉も油も炭水化物もひかえめにとるというものなのです。これが、多くの病気の予防に効果的な食事であり、これが「バランスのとれた食事」と呼ぶべきものなのです。
論文の結果はこちら→「メタアナリシスの結果」
具体的に何を食べるといいの? 答えは「野菜類」
「食と健康」の最重要の論文であるメタアナリシスをすべて集めてわかることは次の3点です。
・ 野菜は多くの疾患の予防に効果的
・ 肉、脂質、炭水化物は要注意
・ 食品(野菜類)からとる栄養は効果的だが、サプリは効果的とはいいがたい
この3点をさらに要約すると、「健康のためには野菜を食べることが大事だ」といえます。当協会では「野菜類」と呼んでいますが、これは次の食品です。
野菜
果物
海藻
豆類
ナッツ
きのこ
全粒穀物(玄米や全粒小麦粉など)
ここで、玄米を野菜と呼んでいることに、ん?と思った人もいるでしょう。当協会のいう「野菜類」とは、つまり食物繊維の豊富な食品です。それをたっぷり食べることが大事です。
食物繊維と聞いて、食品成分表で含有量が多いかどうかを気にする必要はありません。食べものをかむ苦労がどれだけあるかで判断すれば十分です。
健康のためには、かんで消化する苦労が必要なもの、つまり野菜的なものをよく食べることが大事です。(詳しくは書籍版 p.268を参照)
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もっと詳しく…「健康になる食が『野菜類』だという理由」
メタ・チャートの「精製品・サプリメント」の列をみると、全体的にさえない色がならんでおり、多くの論文でサプリの健康効果がないことが示されていることがわかります。
それに対して、「食品からとる栄養」のうち「ビタミン・ミネラル」をみると、気持ちがいいくらい鮮やかな青色がならんでいます。サプリからとるのにくらべて食品からとる栄養成分については、多くの疾患に対して予防効果が示されているのです。
さらに第6・第7の栄養素といわれている「食物繊維・フィトケミカル」の列も同じようにきれいに青色がならんでいます。フィトケミカルとは、ポリフェノールなどで知られる植物由来の微量成分のことで、抗酸化作用などが体にとって有用だと考えられています。
ここで、メタアナリシスの調査項目となっている栄養素がどのような食品に含まれているかを表でみてみましょう(表F、表G)[i]。
わかりやすくするため、植物由来の食品であって食物繊維を多く含むものを野菜類と呼び、網かけで表示しました。こうしてみると、メタアナリシスの研究対象となっている栄養成分の多くは野菜類(野菜、果物、海藻、豆類、ナッツ、きのこ、全粒穀物)に含まれていることがわかります。
事実、「食品からとる栄養」の項では、メタアナリシスの9割は野菜類に含まれる栄養を対象にしています。
なお、ごまはナッツの部類に含まれ、納豆などの大豆製品は豆の部類に含まれます。
表 F メタアナリシスで調べている栄養素で、野菜類に多く含まれているもの
栄養素 | 多く含む食品(多い順) | ||
たっぷり含むもの | 多め | ある程度含むもの | |
βカロテン | 野菜 | 海藻 | 果物 |
ビタミンC | 野菜 | 果物 | 海藻 |
ビタミンE | 魚介、野菜 | ナッツ、果物 | 海藻、たまご |
ビタミンB6 | 魚、肉 | ナッツ、野菜、豆 | 全粒穀物、いも … |
葉酸 | レバー、野菜、豆 | 魚介、たまご | ナッツ、きのこ … |
カリウム | 海藻 | 豆、野菜、魚介 | ナッツ、果物 … |
カルシウム | 魚介(骨や殻つき) | 海藻、乳製品 | 野菜、大豆 |
マグネシウム | 海藻 | ナッツ、豆、魚介 | 全粒穀物、野菜 |
鉄 | 魚介、豆、海藻 | 肉、ナッツ、たまご | 野菜、全粒穀物 |
亜鉛 | 魚介、肉、ナッツ | 豆、チーズ、穀物 | 海藻、野菜 … |
セレン | 魚、たまご、レバー | 肉、小麦、豆 | ナッツ、野菜 |
表 G メタアナリシスで調べている栄養素で、野菜類に多く含まれていないもの
栄養素 | 多く含まれる食品(多い順) | ||
たっぷり含むもの | 多め | ある程度含むもの | |
ビタミンA | レバー | 魚介 | たまご |
ビタミンB12 | 魚介 | のり、レバー | 肉、たまご、牛乳 |
ビタミンD | 魚 | (なし) | たまご、きのこ |
なお、表Gをみて、野菜類だけではビタミンが不足するのではないかと思うかもしれませんが、心配は無用です。
βカロテンはビタミンAに変化する前段階のもの(前駆体といいます)であり、体の中ではビタミンAに変化します。したがって、野菜からはビタミンAがとれないのでは?と心配する必要はありません。
ビタミンB12については、肉や魚、牛乳、たまごをまったく食べない人であればサプリをとる必要がありますが、そうでなければ心配はありません。
また、ビタミンDについては、顔や手に日光を浴びることでも得られるため、よほど屋外に出ないか紫外線防止の化粧品を多用しない限りは欠乏することはないといわれています。
参考までにいうと、「動物性食品を一切とらない人であっても必要な栄養素を十分にとることができる」と、世界最大の栄養士団体である米国栄養士会が公式見解を出しています(Q&A「野菜ばかりでは栄養が偏るのでは?」を参照)。
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[i] Whole Food Catalog(http://wholefoodcatalog.com/)の、各食品群の可食部100gあたりの栄養素の量を参照。表Fおよび表Gは、それらの数値をもとに著者が分類したものです。