第2項 野菜・果物
野菜のメタアナリシス(「食と健康」の最重要の論文)の結果をメタ・チャートで見ると、きれいに青色が並んでいることがわかります。これはつまり、野菜を多くとる人は、多くの病気になるリスクが低いことを意味します。かなりの健康効果が期待できることが一目でわかります。また果物についてもほとんどが青色です。
2-1項 野菜・果物と大腸がん
表をみると、野菜についてのメタアナリシスの結果は肉とはまったく逆に、大腸がんの予防に効果的であることが歴然としています。
野菜について調べた2011年の論文は、表のうちで最も大きなデータを分析しています。19のコホート研究を統合し、169万人ぶんのデータを分析した結果、野菜をよくとる人は大腸がんになるリスクが9%低いことが示されています。これはデータの規模がとても大きな論文であり、結果の信頼性はかなり高いといえます。
なおコホート研究とは、疫学研究のうち、通常10年前後、長いものでは20年、30年と長期にわたって調べた研究です。より精度の高い結果が得られます。
アブラナ科の野菜について調べた2013年の論文も、大きな規模のデータを分析しています。11のコホート研究を統合し、130万人ぶんのデータを分析した結果、アブラナ科の野菜をよくとる人は大腸がんになるリスクが7%低いことが示されています。アブラナ科の野菜とは、キャベツ、大根、カブ、白菜、ブロッコリー、小松菜、菜の花、チンゲン菜などの私たちに身近な野菜です。
大豆食品に関する論文では、女性と男性で大腸がん予防の効果が異なり、女性でのみ予防効果があるという結果になっています。大豆には女性ホルモンと似た働きをするイソフラボンが含まれています。ホルモンの異常はがんと関係があるといわれており、この論文の結果もホルモンが関係しているのかもしれません。
表2-1 野菜・果物と大腸がんのメタアナリシス一覧
調査項目 | 対象疾患 | 疾患リスク | 発表年 | PubMed ID |
■ 野菜 | ||||
アブラナ科の野菜 | 結腸がん | – | 2014 | 24341734 |
豆類 | 結腸直腸腺腫 | – | 2013 | 23826270 |
野菜 | 結腸直腸がん | – | 2013 | 23563998 |
アブラナ科の野菜 | 結腸直腸がん | – | 2013 | 23211939 |
野菜 | 結腸直腸がん | – | 2011 | 21600207 |
野菜 | 結腸がん | ?- | 2007 | 17895473 |
にんにく | 結腸直腸がん | – | 2000 | 11010950 |
■ 大豆食品 | ||||
大豆食品 | 結腸直腸がん(女性) | – – | 2010 | 20056634 |
大豆食品 | 結腸直腸がん(男性) | ? | 2010 | 20056634 |
■ 果物 | ||||
果物 | 結腸直腸がん | – | 2011 | 21600207 |
果物 | 結腸がん | ?- | 2007 | 17895473 |
説明リンク → (メタアナリシスとは) (疾患リスクの見方) (疾患の説明)
2-2項 野菜と前立腺がん
表をみると、野菜のうち特に大豆食品は前立腺がんの予防に効果的であることが示されています。さらに、大豆食品のなかでも発酵の有無によって予防効果にちがいがあります。
2009年の論文(ID:19211820)をみると、非発酵の大豆食品でのみ予防効果が確認されています。発酵大豆食品といえば、みそ、納豆、しょうゆがあり、非発酵の大豆食品には豆腐、豆乳、きなこ、煮豆などがあります。
表2-2 野菜と前立腺がんのメタアナリシス一覧
調査項目 | 対象疾患 | 疾患リスク | 発表年 | PubMed ID |
■ 野菜 | ||||
ねぎ属※1 | 前立腺がん | – | 2013 | 23991965 |
生トマト※2 | 前立腺がん | ? | 2013 | 23883692 |
アブラナ科の野菜※3 | 前立腺がん | ?- | 2012 | 22121852 |
生トマト | 前立腺がん | – | 2004 | 15006906 |
■ 大豆食品 | ||||
大豆食品(特にとうふ) | 前立腺がん | – | 2009 | 19838933 |
非発酵大豆食品 | 前立腺がん | – | 2009 | 19211820 |
発酵大豆 | 前立腺がん | ? | 2009 | 19211820 |
非発酵大豆製品 | 前立腺がん | – | 2005 | 15945102 |
説明リンク → (メタアナリシスとは) (疾患リスクの見方) (疾患の説明)
※1 ねぎ属には、たまねぎ、にんにく、にら、エシャロット、葉ねぎなどがあります。
※2 生トマトについて調べた論文が2013年と2004年に発表されています。しかし一般的にメタアナリシスは発表年が新しいほど信頼性が高くなるため、生トマトによる前立腺がんの予防効果は現時点でははっきりしていないといえます。
※3 アブラナ科の野菜とは、キャベツ、大根、カブ、白菜、ブロッコリー、小松菜、菜の花、チンゲン菜などの私たちに身近な野菜です。
2-3項 野菜・果物と乳がん
表をみると、野菜よりも大豆食品と果物が、乳がんの予防により効果的であることがわかります。
果物について調べた2012年の論文では、10のコホート研究(高精度の疫学研究)を統合し、79万人ぶんのデータを分析した結果、果物をよくとる人は乳がんになるリスクが8%低いことが示されています。表にはのせていませんが、この論文では野菜と果物の両方を多くとる人は乳がんになるリスクが11%低いことも示されています。これは、程度は小さいものの野菜にも乳がんの予防効果があることを意味しています。
表2-3 野菜・果物と乳がんのメタアナリシス一覧
調査項目 | 対象疾患 | 疾患リスク | 発表年 | PubMed ID |
■ 野菜 | ||||
野菜 | 乳がん(ER陰性型)※1 | – | 2013 | 23349252 |
野菜 | 乳がん | 0 | 2012 | 22706630 |
野菜 | 乳がん | 0 | 2001 | 11176915 |
野菜 | 乳がん | – | 2000 | 10738129 |
■ 大豆食品 | ||||
大豆食品 | 乳がん | – | 2006 | 17330506 |
大豆 | 乳がん | – | 2006 | 16595782 |
■ 果物 | ||||
果物 | 乳がん(中国人) | – – | 2014 | 24606455 |
果物 | 乳がん | – | 2012 | 22706630 |
果物 | 乳がん | – | 2001 | 11176915 |
説明リンク → (メタアナリシスとは) (疾患リスクの見方) (疾患の説明)
※1 乳がんにはER陽性型と陰性型の二つがあり、患者の8割が陽性型で、残る2割がER陰性型であることが知られています。2013年のこの論文では、陰性型に限定して野菜との関係を調べています。
2-4項 野菜・果物とその他のがん
表をみると、野菜や大豆食品、そして果物にさまざまながんの予防に効果的であることがわかります。その一方で、発酵大豆食品や漬物を多くとる人はがんになりやすいという結果となっています。
発酵大豆食品とは、納豆やみそ、しょうゆのことですが、これらによって胃がんになるリスクが高くなるという論文がある一方、とうふや煮豆などの非発酵大豆食品では胃がんのリスクが低くなるという正反対の結果となっています。これらの論文の著者は、塩分が影響しているかもしれないと述べています。確かにみそやしょうゆには多くの塩分が含まれています。それを裏付けるように、塩分によって胃がんのリスクが大きく上がることを示したメタアナリシスもあります(11-1項を参照。第11項は書籍版をご覧ください)。 書籍版はAmazonで→「本当に健康になる食」はこれだ! 2015年版
漬物とは、塩をはじめ、しょうゆ、みそ、甘酢、ぬかなどに野菜を漬けて、保存性とおいしさを高めたものですが、漬物を多くとる人は胃、食道、咽頭(のどのあたり)のがんになるリスクが高いという結果が報告されています。なお、論文をくわしくみるとこのようなリスクの増加は特に中国と韓国で顕著であり、日本ではそれほど大きなリスク増加はみられませんでした。これは漬物をとる量が理由かもしれません。
1日にとる漬物(塩を使ったもの)の量は、韓国では200g以上なのに対して、日本の場合は約40gとなっています。一般的には漬物や発酵大豆食品は毎日たくさん食べるものではなく、特に日本では食事全体からみると少量なので、過度な心配は不要だと思います。
また、漬物や発酵大豆食品について心配すべきは主に胃がんなので、胃がん予防の効果がある他の野菜をたくさん食べることにより心配を減らすことができるでしょう。表の論文をみると、野菜、果物をはじめ、ねぎ属やとうふなどの非発酵大豆食品によって胃がんのリスクが大きく下がることがわかります。
表2-4 野菜・果物とその他のがんのメタアナリシス一覧
調査項目 | 対象疾患 | 疾患リスク | 発表年 | PubMed ID |
■ 野菜 | ||||
アブラナ科の野菜※1 | 卵巣がん | ? | 2014 | 24444040 |
アブラナ科の野菜 | 腎細胞がん | – | 2013 | 24204579 |
アブラナ科の野菜 | 肺がん(女性) | – | 2013 | 23553059 |
アブラナ科の野菜 | 胃がん | ?- | 2013 | 23679348 |
トマト製品 | 胃がん | – | 2013 | 23352874 |
アブラナ科の野菜 | 腎細胞がん | – | 2013 | 23859034 |
アブラナ科の野菜 | 胆のうがん | – | 2013 | 22391648 |
野菜 | 食道扁平上皮がん | – – | 2013 | 23319052 |
野菜 | 悪性リンパ腫 | – | 2013 | 23238796 |
野菜 | すい臓がん | 0 | 2012 | 22875754 |
野菜 | すい臓がん | ?- | 2012 | 22018953 |
ねぎ属※2 | 胃がん | – – – | 2011 | 21473867 |
生野菜 | 胃がん | – – | 2009 | 19860848 |
野菜 | 胃がん | – – | 2007 | 17554204 |
野菜 | 子宮体がん | – | 2007 | 17571962 |
野菜 | 口腔がん | – – | 2006 | 16685056 |
非保存野菜※3 | 鼻咽頭がん | – – | 2006 | 16570274 |
野菜 | 胃がん | – – | 2005 | 16351501 |
にんにく | 胃がん | – – | 2000 | 11010950 |
野菜不足※4 | 胆のうがん | + | 2000 | 10752797 |
■ 大豆食品 | ||||
大豆 | 肺がん | – | 2012 | 23097255 |
大豆 | 肺がん | – | 2011 | 22071712 |
非発酵大豆食品 | 胃がん | – – | 2011 | 21070479 |
大豆 | 子宮体がん、卵巣がん | – – | 2009 | 19775307 |
非発酵大豆食品 | 胃がん | – | 2000 | 11045787 |
■ 発酵大豆食品 | ||||
発酵大豆食品 | 胃がん | + | 2011 | 21070479 |
発酵大豆食品 | 胃がん | + | 2000 | 11045787 |
■ 漬物 | ||||
漬物野菜 | 胃がん | + + | 2012 | 22499775 |
漬物野菜 | 胃がん | + | 2009 | 19860848 |
漬物野菜 | 食道がん | + + + | 2009 | 19862003 |
保存野菜※3 | 鼻咽頭がん | + + + | 2006 | 16570274 |
■ 果物 | ||||
果物 | 胃がん | – | 2014 | 24613128 |
果物 | 食道扁平上皮がん | – – | 2013 | 23319052 |
果物 | すい臓がん | 0 | 2012 | 22875754 |
かんきつ類 | すい臓がん | – | 2009 | 18824947 |
果物 | 子宮体がん | ? | 2007 | 17571962 |
果物 | 胃がん | – – | 2007 | 17554204 |
果物 | 口腔がん | – – | 2006 | 16685056 |
果物 | 胃がん | – – – | 2005 | 16351501 |
果物不足※4 | 胆のうがん | + + | 2000 | 10752797 |
説明リンク → (メタアナリシスとは) (疾患リスクの見方) (疾患の説明)
※1 アブラナ科の野菜とは、キャベツ、大根、カブ、白菜、ブロッコリー、小松菜、菜の花、チンゲン菜などの私たちに身近な野菜です。
※2 ねぎ属には、たまねぎ、にんにく、にら、エシャロット、葉ねぎなどがあります。
※3 保存野菜とは塩漬けや発酵した漬物、缶詰などのことです。非保存野菜とはそれ以外の野菜です。
※4 この論文の結果は、「野菜/果物をよくとる人は胆のうがんになるリスクが低い」と同じ意味です。そのため、メタ・チャートではこの判定結果を青色で表示しています。
2-5項 野菜・果物と心臓疾患
表をみると、野菜と果物は心臓疾患の予防に効果的であることがわかります。冠動脈性心疾患とは、心筋梗塞や狭心症などのことです。これらはいずれも、問題のある生活習慣がつづくことで動脈硬化が進み、その結果として心臓の血管である冠動脈がつまるなどにより発症するものです。
この表のうち最も新しい2007年の論文では、野菜と果物を多くとることと心臓疾患の関係を調べています。具体的には野菜と果物を350g以上とる人と、210g以下しかとらない人とで比較しています。13のコホート研究(高精度の疫学研究)を統合し、平均11年にわたって調査した28万人ぶんのデータを分析した結果、野菜と果物をよくとる人は冠動脈性心疾患になるリスクが17%低いことが示されています。
表2-5 野菜・果物と心臓疾患のメタアナリシス一覧
調査項目 | 対象疾患 | 疾患リスク | 発表年 | PubMed ID |
■ 野菜 | ||||
野菜と果物 | 冠動脈性心疾患 | – | 2007 | 17443205 |
野菜と果物(1サービング※1/日) | 冠動脈性心疾患 | – | 2006 | 16988131 |
野菜と果物 | 心臓疾患 | – | 1998 | 9725654 |
■ 果物 | ||||
果物(1サービング/日) | 冠動脈性心疾患 | – | 2006 | 16988131 |
説明リンク → (メタアナリシスとは) (疾患リスクの見方) (疾患の説明)
※1 サービングとは食べる量の目安としてアメリカでよく使われている単位です。野菜・果物の1サービングは約70g[i]です。(参考:Mサイズのみかんの中身は約70g)
2-6項 野菜・果物と脳卒中
表をみると、野菜と果物は脳卒中の予防に効果的であることがわかります。表の論文のうち最も大きなデータを分析しているのは2014年の論文です。20のコホート研究(高精度の疫学研究)を統合し、76万人ぶんのデータを分析した結果、野菜をよくとる人は脳卒中になるリスクが14%低く、果物の場合は23%低いことが示されています。
表2-6 野菜・果物と脳卒中のメタアナリシス一覧
調査項目 | 対象疾患 | 疾患リスク | 発表年 | PubMed ID |
■ 野菜 | ||||
野菜 | 脳卒中 | – | 2014 | 24811336 |
野菜と果物 | 脳卒中 | – – | 2006 | 16443039 |
野菜と果物(1サービング※1/日) | 脳卒中 | – | 2005 | 16247045 |
■ 果物 | ||||
果物 | 脳卒中 | – – | 2014 | 24811336 |
果物(1サービング/日) | 脳卒中 | – | 2005 | 16247045 |
説明リンク → (メタアナリシスとは) (疾患リスクの見方) (疾患の説明)
※1 サービングとは食べる量の目安としてアメリカでよく使われている単位です。野菜・果物の1サービングは約70gです。(参考:Mサイズのみかんの中身は約70g)
2-7項 野菜・果物と糖尿病
表の一番上の2012年の論文では、野菜と果物をよくとる人は糖尿病になるリスクが7%低いことが示されています。さらに2010年の論文では、野菜のうち特に緑色の葉物野菜について調べたところ、糖尿病になるリスクが14%低いことがわかりました。2型糖尿病は、糖分のとりすぎや肥満によって発症するとされ、発症後も糖分のとりすぎをきびしく管理することが求められる病気です。野菜と一言でいってもじゃがいもや、にんじん、かぼちゃ、とうもろこしといった糖分の高いものもあります。したがって2010年の論文のように、糖分の低い葉物野菜にしぼって分析することで、糖尿病の予防効果がより大きいことがわかったのでしょう。実際に、糖分の高い食品について調べたメタアナリシスでは、それらを多くとる人は糖尿病になるリスクが高いことが示されています(6-5項を参照)。
果物の論文でも興味深い結果が得られています。2013年の論文では、3つのコホート研究(高精度の疫学研究)を統合し、19万人ぶんのデータを分析したところ、果物を多くとっても糖尿病のリスクは高くなりませんでしたが、果物ジュースを多くとる場合では糖尿病のリスクが8%高いことが示されています。果物はジュースでとるよりもそのままとるほうが健康的であることを示す研究結果です。
表2-7 野菜・果物と糖尿病(2型)のメタアナリシス一覧
調査項目 | 対象疾患 | 疾患リスク | 発表年 | PubMed ID |
■ 野菜 | ||||
野菜と果物 | 糖尿病 | – | 2012 | 22854878 |
緑色の葉物野菜 | 糖尿病 | – | 2010 | 20724400 |
野菜と果物 | 糖尿病 | ? | 2007 | 17984654 |
■ 果物 | ||||
果物 | 糖尿病 | 0 | 2013 | 23990623 |
果物ジュース | 糖尿病 | + | 2013 | 23990623 |
説明リンク → (メタアナリシスとは) (疾患リスクの見方) (疾患の説明)
2-8項 野菜・果物とぜんそく
表をみると、野菜や果物はぜんそくの予防に効果的であることがわかります。果物について調べた2014年の論文では、5つのコホート研究(高精度の疫学研究)を統合し、1万3千人分のデータを分析した結果、果物をよくとる人はぜんそくになるリスクが22%低いことが示されています。表の論文はどれもデータの規模がそれほど大きくないため、今後さらに多くのデータを統合することで、より確定的な結果を得ることができるでしょう。
表2-8 野菜・果物とぜんそくのメタアナリシス
調査項目 | 対象疾患 | 疾患リスク | 発表年 | PubMed ID |
■ 野菜 | ||||
野菜 | ぜんそく | – | 2014 | 24947126 |
■ 果物 | ||||
果物 | ぜんそく | – – | 2014 | 24947126 |
果物 | ぜん鳴※1 | – | 2011 | 21185068 |
果物 | ぜん鳴 | ?- | 2010 | 20522849 |
説明リンク → (メタアナリシスとは) (疾患リスクの見方) (疾患の説明)
※1 ぜん鳴(ぜんめい)とは、ヒューヒューゼーゼーという音をともなった呼吸困難の状態であり、ぜんそくの主症状のことです。
2-9項 野菜と感染症
表の論文は、エキナセアという日本ではなじみのない植物についてです。これはアメリカ原産のキク科のハーブで、風邪予防によく使われています。2006年の論文では、3つの臨床試験を統合した結果、エキナセアをとることで風邪を発症するリスクが大きく減少することが示されています。この臨床試験では人に風邪のウイルスを投与し、エキナセアを与えたグループとプラセボ(ニセ薬)を与えたグループとにわけて風邪を発症した割合をくらべています。驚きの検証方法ですね。
表2-9 野菜と感染症のメタアナリシス一覧
調査項目 | 対象疾患 | 疾患リスク | 発表年 | PubMed ID |
エキナセア | 風邪 | – – | 2007 | 17597571 |
エキナセア | 風邪 | – – – | 2006 | 16678640 |
説明リンク → (メタアナリシスとは) (疾患リスクの見方) (疾患の説明)
2-10項 野菜・果物と死亡率
表をみると、野菜や果物には死亡率を下げる効果があることがわかります。表の2つの結果は1報の論文からのものです。この論文では、16のコホート研究(高精度の疫学研究)を統合し、83万人分のデータを分析した結果、野菜をよくとる人は、すべての死因を含めた死亡率が5%低く、果物の場合は6%低いことが示されています。
表2-10 野菜・果物と死亡率のメタアナリシス一覧
調査項目 | 対象疾患 | 疾患リスク | 発表年 | PubMed ID |
■ 野菜 | ||||
野菜 | 死亡率 | – | 2014 | 25073782 |
■ 果物 | ||||
果物 | 死亡率 | – | 2014 | 25073782 |
説明リンク → (メタアナリシスとは) (疾患リスクの見方) (疾患の説明)
2-11項 野菜・果物についての結論
以上のように、野菜・果物と疾患リスクについてはかなり多くのメタアナリシスが発表されており、がんをはじめ、心臓疾患、脳卒中、糖尿病の予防に効果的であることがわかります。
野菜の中では例外的に、発酵大豆食品と漬物によって胃がんなどのリスクが高くなるという結果がありますが、それを除くと、野菜・果物の効果はきれいに肉の影響の正反対となっています。このような対照的な結果をみると、動物を食べるのと植物を食べるのとでは人の生き方として正反対だと思えるほど体への影響が異なることがわかります。このように、メタアナリシスを集めて調べるメタ栄養学によって、「本当に健康になる食」の答えが浮かび上がってくるのです。
また、第1項の結論でも述べたように、病気になる前段階の健康状態について考えると、野菜や果物をとる意味は非常に大きいと思います。心臓疾患と脳卒中はどちらも血管に関する病であり、血圧や血中脂質の異常によって動脈硬化などが進行し、心臓や脳の血管がつまったり破れたりするという深刻なものです。これらの疾患になるリスクが野菜と肉とでは正反対であることから、血圧や血中脂質などへの影響も正反対であることが十分に考えられます。
野菜不足によって血液の成分が悪い状態となれば、それによって体が重たく感じたり、疲れがとれない、しんどい、気持ちが晴れないといった病気といえない不調が起こることは当然なのではないでしょうか。現代はこのような病気といえない体の不調が世の中にまん延しているように思います。それは、「①疲れやだるさの原因は?」でも述べたように、年々進行する野菜不足が大きな原因ではないかと思うのです。
それを自覚する人が増えているためか、最近はカフェやコンビニのメニューにも野菜をあつかったものが多くなってきました。野菜ジュースもよく売れている様子です。しかし、それと同時に多くの人は「健康のために」といってサプリメントを求めている状況があります。
街のいたるところで健康効果をうたうサプリや食品の広告があり、テレビや新聞などでも“健康食品”の広告を目にしない日はありません。サプリによって本当に健康効果が出るのなら文句はいいません。しかし次の項で述べるように、メタ栄養学がはっきりと示すのは、サプリメントの効果が不確かであるとともに、野菜の大切さを示すさらなる証拠なのです。
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[i] 農林水産省、「食事バランスガイド」 より。