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詳細説明

大腸がん

大腸がんはこの数十年で患者数が大きく増えているがんの一つです。罹患率(1年間で新たに診断された人の割合)は30年前とくらべて2.2倍となっており、2007年の1年だけで11万人の人が新たに大腸がんと診断されています[i]

下図は1975年以降の罹患(りかん)率の変化をみたものです[ii]。日本で罹患数の多いがんの上位5種類のうち、年々減少している胃がん以外のものを表示しています。グラフをみるとどのがんも毎年発症する人の数が増加していることがわかります。

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本来がんというのは年齢が上がるほど発生率が上がるものであり、がんの最大の原因は「年をとること」だといっていいほど、ある意味で自然に患者数は増えるものですが、このグラフでは高齢化の影響を取りのぞいたデータを使用しています。したがって、このような勢いで増えているがん患者数は、年齢以外のものが原因で増えていることになります。

[i] 国立がん研究センターがん対策情報センター「地域がん登録全国推計によるがん罹患データ(1975年~2007年)」より。11万人は、年齢調整されていない実際の患者数です。
[ii] 同上。図には年齢調整されたデータを使用しており、高齢化の影響は除かれています。年齢調整罹患率とは、十万人あたりの新規患者数のことです。また、本文で「30年前とくらべると」と書かれている場合は、1977年と2007年のデータを比較しています。

前立腺がん

前立腺がんの罹患率は近年大きく増加しており、1977年から2007年の30年間でなんと5.4倍に増加しています(図:がん4種罹患率)。前立腺がんは自覚症状があまりないため、がんの進行に気づかずに、早期発見ができないケースが多いといわれています。

乳がん

乳がんの罹患率は、前立腺がんとともにこの数年で大変な増加傾向を示しており、今後の患者数の増加が非常に心配です。特に2000年以降は恐ろしい勢いで増加しています(図:がん4種罹患率)。罹患率は1977年から2007年の30年間で3.4倍に増加しています。子宮がんや卵巣がんなどの女性固有のがんのうち、乳がんは最も罹患率の高いものです。

その他のがん

これまで大腸がん、前立腺がん、乳がんについて述べましたが、がんにはこのほか肺がんや肝臓がん、白血病など多くの種類があります。すべてのがんを合わせた発症数は、大腸がんなどと同様に年々増加傾向にあります(下図)。2007年には1年間で70万人がなんらかのがんを発症しています[i]。なお、このグラフもがんの最大の原因である高齢化の影響を除いたデータを使用しているので、国内では年齢以外の影響でこのようにがんが増え続けていることになります。

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[i] 国立がん研究センターがん対策情報センター「地域がん登録全国推計によるがん罹患データ(1975年~2007年)」より。グラフは変化を強調するために底上げしています。

心臓疾患

心筋梗塞をはじめとする心臓疾患は、長年にわたり日本の主な死亡原因となっています。下図に示したように、1年間の死亡者数はがんに次いで多く、約20万人となっています[i]

fig9メタアナリシスで調べている心臓疾患には多くの種類があります。なじみのない病名が多いため、図で分類しました(下図)。最も大きな分類は心臓血管疾患です。これは、心臓だけでなく全身の血管に関する疾患を含みます。このうちの一つが冠動脈性心疾患です。冠動脈とは、心臓そのものが必要とする酸素や栄養を 与えるために血液を送る血管です。この冠動脈がつまる等によって起こるのが冠動脈性心疾患です。代表的なものに狭心症や心筋梗塞があります。

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[i] 厚生労働省「平成22年(2010)人口動態統計」性別にみた死因順位別死亡数より。

脳卒中

脳卒中は、脳の血管が詰まったり(脳梗塞)や血管が破れたり(脳出血)することで脳が損傷するという深刻な疾患です。発症後は後遺症がのこることも多く、日常生活を自分一人で行えなくなるなど、介護の面でも大きな問題を残します。がんや心臓疾患と同様に、日本人の主な死亡原因であり、死亡数は毎年12万人で、現在も150万人以上の患者がいます[i]。近年まで、国内の脳卒中の患者数はずっとがんの患者数よりも多い状態がつづいていました。(図:四大疾病の増加) その意味で脳卒中は国民への影響が非常に大きい疾患です。なお、脳卒中は脳梗塞と脳出血からなり、脳梗塞は脳卒中全体の75%を占めています[ii]

[i] 厚生労働省「平成22年度我が国の保健統計 1.患者の動向(p.22)」より。
[ii] 厚生労働省「平成23年患者調査」より。

糖尿病

糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病の2種類があります。このうち食生活や運動不足などの生活習慣による影響が大きいといわれているのが2型糖尿病です。尿に糖が出ることから糖尿病と呼ばれますが、そのこと自体が問題なのではなく、時間とともに全身の神経や目、腎臓に障害が起こることが問題となります。体が思うように動かなくなったり、失明したり、人工透析が必要となるなどの症状は、日常生活の質を大きく低下させてしまう深刻なものです。

患者数の増加も大きな問題です。四大疾病の増加(下図)をみると、国内の糖尿病の患者数は1965年から2005年までに5.4倍に増え、現在は240万人いるとされています[i]。その間の日本人口に占める60代の割合は2.1倍に増えているのみであり、糖尿病の患者数は人口の高齢化よりもずっと大きく増加していることがわかります。

fig5

なお、1型糖尿病は自己免疫疾患であり、2型糖尿病とは発症のしくみが大きく異なります。日本での糖尿病患者の95%は2型糖尿病患者です。糖尿病について調べたメタアナリシスも、ほぼすべてが2型糖尿病を対象としたものです。

[i] 厚生労働省「平成22年度我が国の保健統計 1.患者の動向(p.22)」より。

メタボ

メタボとはメタボリックシンドロームの略で、肥満に加えて高血圧、脂質異常、高血糖のうち2つ以上該当する状態のことです。厚生労働省のウェブサイトによると「心臓病や脳卒中といった命にかかわる病気の危険性が急激に高まるので、大変危険」な状態とされています。厚生労働省の調査では、40~74歳の男性は2人に1人、女性なら5人に1人がメタボ(またはその予備軍)だとあります[i]

メタボというのは医学的には新しい概念であり、疫学研究などもまだ少ないため、食とメタボ予防のメタアナリシスも現在までに数報あるのみです。

[i] 厚生労働省「平成19年国民健康・栄養調査結果の概要について」より。

ぜんそく

ぜんそくは、炎症によって気道がせまくなり、恐ろしい呼吸困難をともなう発作をくりかえすアレルギー疾患です。図に示したように、ぜんそくもこれまで紹介した疾患と同様、この数十年の間に患者数が大きく増加しています[i]。幸い90年代の後半からは減少傾向にありますが、依然として国内には90万人[ii]の患者がおり、その数は1965年から2005年の40年で3.7倍に増えています。

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[i] がん研究振興財団「がんの統計’12」15. 受療率の推移(p.98)より。受療率とは、ある調査日の入院患者と外来患者の総数の、10万人あたりの数。
[ii] 厚生労働省「平成22年度我が国の保健統計」1.患者の動向(p.22)より。

アレルギー疾患

メタアナリシスが取りあつかっているアレルギー疾患の代表はアトピー性皮膚炎です。2007年に文部科学省から発表された調査報告書[i]によると、全国の小中高校生のうち、アトピー性皮膚炎と診断されている児童は70万人であり、全生徒の5.5%を占めています。どうにもおさまらないかゆみから皮膚をかきこわし、血がにじむ皮膚が赤くはれ上がっている様子は、みていて胸が裂かれる思いがします。なぜアトピーが起こるのか、またどうすれば根治できるのかについては現在でも十分にわかっていません。疫学研究では生活環境と病気の関連を調べることで、病気の原因を解明しようとします。メタアナリシスでは、アトピーの原因を示唆する結果も示されています。

[i] 文部科学省「アレルギー疾患に関する調査研究報告書」(平成 19 年3月)より。

精神・神経疾患

がん、心臓疾患、そして脳卒中は日本の3大疾病として知られています。それに糖尿病を加えたものを4大疾病と呼んで、政府は医療政策をとってきました。そして2011年7月、4大疾病に精神疾患を加えて5大疾病とするという厚生労働省の新方針が報道されました。それほどまでに、精神・神経疾患が増加しているということです。精神疾患とは、精神面の障害がある疾患のことです。それに対して神経疾患とは、身体面をコントロールする神経に障害が起こる疾患です。

厚生労働省の資料によると、国内の精神・神経疾患の患者数は約420万人となっています[i]。これは、4大疾病のうちで最も患者数が多い糖尿病(約240万人)を大きく上回り、がんの患者数の3倍近い数となっています。精神疾患は現在国内に266万人の患者がいます。このうちで最も多いのがうつ病などの気分障害です。2008年の患者数は100万人を超えており、1999年と比較すると、患者数は2.4倍に増加しています(下図)[ii]

fig12うつ病の社会的な認知度が大きくなったことは一つの原因だと思われますが、それにしても深刻な増加です。参考として2011年の患者数の上位3疾患を表にしました(表C)。

hyo-c一方、神経疾患は現在国内に156万人の患者がいます[iii]。表Dには神経疾患のうちで患者数の多い上位6疾患をあげました。このうちアルツハイマー病とパーキンソン病については、複数のメタアナリシスが発表されています。

hyo-d

アルツハイマー病とは、神経細胞に異常タンパクが蓄積するなどによって、脳、特に記憶をつかさどる海馬という部分が委縮する疾患です。その症状は、新しいことが覚えられなくなることにはじまり、言葉や道具が使えなくなるなど、これまでできていた日常の行動ができなくなったり、暴言や暴力を働くなど心理的な異常を起こしたり、異常な行動をとるなどの状態となる非常に深刻な疾患です。

パーキンソン病とは、脳の運動機能にかかわる神経細胞に異常が起こり、手足の震えやこわばりによって体を思ったように動かせなくなる疾患です。

アルツハイマー病は、近年おそろしい勢いで患者数が増えています。2011年の調査では、アルツハイマー病は睡眠障害とともに、神経疾患の患者全体の四分の一ずつを占め、その数は37万人となっています。驚くことに、1999年の調査では患者数は3万人でした。これはつまり、たった12年間で患者数は10倍以上に増えているのです(下図)。どちらも老化によって起こる疾患だとといわれますが、メタアナリシスの結果をみると、食生活の影響が強く示唆されるものとなっています。

fig13[i] 厚生労働省「第19回社会保障審議会医療部会資料」より。
[ii] 厚生労働省「平成23年患者調査」より。
[iii] 同上。

目の疾患

目の疾患について調べたメタアナリシスでは、加齢黄斑変性と白内障が対象となっています。

加齢黄斑変性とは、加齢にともなう黄斑の障害によって目がみえなくなっていく疾患です。黄斑とは、網膜の中央にある黄色を帯びた部分であり、最も感度の高いため視覚にとって非常に重要な部分です。国内の推定患者数は69万人であり、これは国内の視覚障害の第4位となっています。患者数はこの10年で約2倍になっており、深刻な増加を示しています[i]

白内障とは、水晶体という部分が白く濁ることで視界がかすんで見えにくくなるものです。

[i] 難病情報センター、ウェブサイト「加齢黄斑変性」より。

骨折

骨折について調べたメタアナリシスのうち、最も論文数が多いのは股関節の骨折です。若い人たちにみられる骨折というと、交通事故やスポーツなどで起こる腕や足の骨折ですが、股関節の骨折は高齢になるにつれて発生率が上がる代表的な骨折です。これは、具体的には大腿骨頚部骨折と呼ばれ、上半身を支える大腿骨の、雪だるまのように突きでた首の部分(頚部)が折れてしまうものです。特に高齢者が転倒することで骨折してしまい、その後から寝たきりの状態となってしまうことで、要介護者となるケースが多いという深刻なものです。

ある調査[i]によると、この骨折は近年急増しており、特に女性ではこの20年のあいだで、発生数は実に3倍になっています。これは驚くべき増加です(下図)。

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[i] ウェブサイト 骨と関節の健康.jp、「大腿骨頸部骨折が要介護を招く!?」より。

感染症

メタアナリシスが調査している感染症は、主に風邪です。風邪にはウイルス性と細菌性のものがありますが、メタアナリシスではこれらは区別されていません。

対象疾患として風邪の次に論文数が多いのは中耳炎です。これは耳の鼓膜の奥に起こる炎症で、大部分は細菌の感染によるものです。

先天性異常

先天性異常にはいろいろありますが、メタアナリシスで対象となっている代表的な先天性異常として口唇口蓋裂があります。これは、生まれつき上の唇や上あごが裂けている状態のことで、およそ500人に1人の割合で発生しています。

もう一つの代表的な先天性異常に神経管欠損があります。これは妊娠初期に、おなかの胎児の脊髄と大脳がきちんと形成されない疾患で、麻痺や発達異常のほか、妊娠中の死産や出生後の突然死の大きな原因となるものです。

死亡率

メタアナリシスの中には、疾患の種類によらず死亡するリスクを調べているものがあります。つまり、生活習慣の異なる2つのグループのうちどちらが死亡率が高かったかを調べて、その生活習慣がよいか悪いかを評価するものです。通常、死亡率の算出にはすべての死亡原因を含めたデータを使います。

その他の疾患

虫歯や貧血、流産、自己免疫疾患などのように、これまでの分類に含まれない疾患については、「その他の疾患」としてまとめています。

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